2006年 11月 21日
昭和22年の刑法改正 |
六法で刑法を引いてみると、「第〇条 削除」となっている条文がけっこう目につきます。最近削除された尊属殺人罪などの規定はともかく、第二次大戦後の日本国憲法施行の際、昭和22年法律第124号(昭和22年11月15日施行)で削除された規定についてはあまり知る機会もないので、削除前の条文を紹介しておきます。
第五十五条 連続シタル数個ノ行為ニシテ同一ノ罪名ニ触ルルトキハ一罪トシテ之ヲ処断ス
この連続犯の規定は、一罪として処断される範囲が広すぎるために削除となったのでしょう。
第五十八条 裁判確定後再犯者タルコトヲ発見シタルトキハ前条ノ規定ニ従ヒ加重ス可キ刑ヲ定ム
2 懲役ノ執行ヲ終リタル後又ハ執行ノ免除アリタル後発見セラレタル者ニ付テハ前項ノ規定ヲ適用セス
確定後に再犯者だったと発覚したら、加重した刑を改めて定めるとした規定です。憲法39条後段に違反する疑いがあるので、削除となりました。
第七十三条 天皇、太皇太后、皇太后、皇后、皇太子又ハ皇太孫ニ対シ危害ヲ加ヘ又ハ加ヘントシタル者ハ死刑ニ処ス
第七十四条 天皇、太皇太后、皇太后、皇后、皇太子又ハ皇太孫ニ対シ不敬ノ行為アリタル者ハ三月以上五年以下ノ懲役ニ処ス
2 神宮又ハ皇陵ニ対シ不敬ノ行為アリタル者亦同シ
第七十五条 皇族ニ対シ危害ヲ加ヘタル者ハ死刑ニ処シ危害ヲ加ヘントシタル者ハ無期懲役ニ処ス
第七十六条 皇族ニ対シ不敬ノ行為アリタル者ハ二月以上四年以下ノ懲役ニ処ス
皇室に対する罪は章ごと全て削除されました。
第八十三条 敵国ヲ利スル為メ要塞、陣営、艦船、兵器、弾薬、汽車、電車、鉄道、電線其他軍用ニ供スル場所又ハ者ヲ損壊シ若クハ使用スルコト能ハサルニ至ラシメタル者ハ死刑又ハ無期懲役ニ処ス
第八十四条 帝国ノ軍用ニ供セサル兵器、弾薬其他直接ニ戦闘ノ用ニ供ス可キ物ヲ敵国ニ交付シタル者ハ無期又ハ三年以上ノ懲役ニ処ス
第八十五条 敵国ノ為メニ間諜ヲ為シ又ハ敵国ノ間諜ヲ幇助シタル者ハ死刑又ハ無期若クハ五年以上ノ懲役ニ処ス
2 軍事上ノ機密ヲ敵国ニ漏泄シタル者亦同シ
第八十六条 前五条ニ記載シタル以外ノ方法ヲ以テ敵国ニ軍事上ノ利益ヲ与ヘ又ハ帝国ノ軍事上ノ利益ヲ害シタル者ハ二年以上ノ有期懲役ニ処ス
第八十九条 本章ノ規定ハ戦時同盟国ニ対スル行為ニ亦之ヲ適用ス
第九十条 帝国ニ滞在スル外国ノ君主又ハ大統領ニ対シ暴行又ハ脅迫ヲ加ヘタル者ハ一年以上十年以下ノ懲役ニ処ス
2 帝国ニ滞在スル外国ノ君主又ハ大統領ニ対シ侮辱ヲ加ヘタル者ハ三年以下ノ懲役ニ処ス但外国政府ノ請求ヲ待テ其罪ヲ論ス
第九十一条 帝国ニ派遣セラレタル外国ノ使節ニ対シ暴行又ハ脅迫ヲ加ヘタル者ハ三年以下ノ懲役ニ処ス
2 帝国ニ派遣セラレタル外国ノ使節ニ対シ侮辱ヲ加ヘタル者ハ二年以下ノ懲役ニ処ス但被害者ノ請求ヲ待テ其罪ヲ論ス
昔は「帝国」でした。これは外患に関する罪に限らず、昭和22年改正前の刑法では現行法の「日本国」は「帝国」、「日本国民」は「帝国臣民」でした。ちなみに印紙犯罪処罰法(明治42年法律第39号)には、今でも「帝国政府」が残っています。
第七章ノ二 安寧秩序ニ対スル罪
第百五条ノ二 人心ヲ惑乱スルコトヲ目的トシテ虚偽ノ事実ヲ流布シタル者ハ五年以下ノ懲役若クハ禁錮又ハ五千円以下ノ罰金ニ処ス
2 銀行預金ノ取付其他経済上ノ混乱ヲ誘発スルコトヲ目的トシテ虚偽ノ事実ヲ流布シタル者ハ七年以下ノ懲役若クハ禁錮又ハ五千円以下ノ罰金ニ処ス
第百五条ノ三 戦時、天災其他ノ事変ニ際シ人心ノ惑乱又ハ経済上ノ混乱ヲ誘発スヘキ虚偽ノ事実ヲ流布シタル者ハ三年以下ノ懲役若クハ禁錮又ハ三千円以下ノ罰金ニ処ス
第百五条ノ四 戦時、天災其他ノ事変ニ際シ暴利ヲ得ルコトヲ目的トシテ金融界ノ攪乱、重要物資ノ生産又ハ配給ノ阻害其他ノ方法ニ依リ国民経済ノ運行ヲ著シク阻害スル虞アル行為ヲ為シタル者ハ無期又ハ一年以上ノ懲役ニ処ス
2 前項ノ罪ヲ犯シタル者ハ情状ニ因リ十万円以下ノ罰金ヲ併科スルコトヲ得
これらの罪は昭和16年法律第61号で追加されていたもので、戦時に備えた規定だったためか、戦後は跡形もなく章ごと削除されました。
第百三十一条 故ナク皇居、禁苑、離宮又ハ行在所ニ侵入シタル者ハ三月以上五年以下ノ懲役ニ処ス
2 神宮又ハ皇陵ニ侵入シタル者亦同シ
第百三十二条 本章ノ未遂罪ハ之ヲ罰ス
皇室関係の住居侵入等の罪も削除されました。
第百八十三条 有夫ノ婦姦通シタルトキハ二年以下ノ懲役ニ処ス其相姦シタル者亦同シ
2 前項ノ罪ハ本夫ノ告訴ヲ待テ之ヲ論ス但本夫姦通ヲ縦容シタルトキハ告訴ノ効ナシ
有名な姦通罪です。憲法14条1項に違反する疑いがあるので削除されました。
第五十五条 連続シタル数個ノ行為ニシテ同一ノ罪名ニ触ルルトキハ一罪トシテ之ヲ処断ス
この連続犯の規定は、一罪として処断される範囲が広すぎるために削除となったのでしょう。
第五十八条 裁判確定後再犯者タルコトヲ発見シタルトキハ前条ノ規定ニ従ヒ加重ス可キ刑ヲ定ム
2 懲役ノ執行ヲ終リタル後又ハ執行ノ免除アリタル後発見セラレタル者ニ付テハ前項ノ規定ヲ適用セス
確定後に再犯者だったと発覚したら、加重した刑を改めて定めるとした規定です。憲法39条後段に違反する疑いがあるので、削除となりました。
第七十三条 天皇、太皇太后、皇太后、皇后、皇太子又ハ皇太孫ニ対シ危害ヲ加ヘ又ハ加ヘントシタル者ハ死刑ニ処ス
第七十四条 天皇、太皇太后、皇太后、皇后、皇太子又ハ皇太孫ニ対シ不敬ノ行為アリタル者ハ三月以上五年以下ノ懲役ニ処ス
2 神宮又ハ皇陵ニ対シ不敬ノ行為アリタル者亦同シ
第七十五条 皇族ニ対シ危害ヲ加ヘタル者ハ死刑ニ処シ危害ヲ加ヘントシタル者ハ無期懲役ニ処ス
第七十六条 皇族ニ対シ不敬ノ行為アリタル者ハ二月以上四年以下ノ懲役ニ処ス
皇室に対する罪は章ごと全て削除されました。
第八十三条 敵国ヲ利スル為メ要塞、陣営、艦船、兵器、弾薬、汽車、電車、鉄道、電線其他軍用ニ供スル場所又ハ者ヲ損壊シ若クハ使用スルコト能ハサルニ至ラシメタル者ハ死刑又ハ無期懲役ニ処ス
第八十四条 帝国ノ軍用ニ供セサル兵器、弾薬其他直接ニ戦闘ノ用ニ供ス可キ物ヲ敵国ニ交付シタル者ハ無期又ハ三年以上ノ懲役ニ処ス
第八十五条 敵国ノ為メニ間諜ヲ為シ又ハ敵国ノ間諜ヲ幇助シタル者ハ死刑又ハ無期若クハ五年以上ノ懲役ニ処ス
2 軍事上ノ機密ヲ敵国ニ漏泄シタル者亦同シ
第八十六条 前五条ニ記載シタル以外ノ方法ヲ以テ敵国ニ軍事上ノ利益ヲ与ヘ又ハ帝国ノ軍事上ノ利益ヲ害シタル者ハ二年以上ノ有期懲役ニ処ス
第八十九条 本章ノ規定ハ戦時同盟国ニ対スル行為ニ亦之ヲ適用ス
第九十条 帝国ニ滞在スル外国ノ君主又ハ大統領ニ対シ暴行又ハ脅迫ヲ加ヘタル者ハ一年以上十年以下ノ懲役ニ処ス
2 帝国ニ滞在スル外国ノ君主又ハ大統領ニ対シ侮辱ヲ加ヘタル者ハ三年以下ノ懲役ニ処ス但外国政府ノ請求ヲ待テ其罪ヲ論ス
第九十一条 帝国ニ派遣セラレタル外国ノ使節ニ対シ暴行又ハ脅迫ヲ加ヘタル者ハ三年以下ノ懲役ニ処ス
2 帝国ニ派遣セラレタル外国ノ使節ニ対シ侮辱ヲ加ヘタル者ハ二年以下ノ懲役ニ処ス但被害者ノ請求ヲ待テ其罪ヲ論ス
昔は「帝国」でした。これは外患に関する罪に限らず、昭和22年改正前の刑法では現行法の「日本国」は「帝国」、「日本国民」は「帝国臣民」でした。ちなみに印紙犯罪処罰法(明治42年法律第39号)には、今でも「帝国政府」が残っています。
第七章ノ二 安寧秩序ニ対スル罪
第百五条ノ二 人心ヲ惑乱スルコトヲ目的トシテ虚偽ノ事実ヲ流布シタル者ハ五年以下ノ懲役若クハ禁錮又ハ五千円以下ノ罰金ニ処ス
2 銀行預金ノ取付其他経済上ノ混乱ヲ誘発スルコトヲ目的トシテ虚偽ノ事実ヲ流布シタル者ハ七年以下ノ懲役若クハ禁錮又ハ五千円以下ノ罰金ニ処ス
第百五条ノ三 戦時、天災其他ノ事変ニ際シ人心ノ惑乱又ハ経済上ノ混乱ヲ誘発スヘキ虚偽ノ事実ヲ流布シタル者ハ三年以下ノ懲役若クハ禁錮又ハ三千円以下ノ罰金ニ処ス
第百五条ノ四 戦時、天災其他ノ事変ニ際シ暴利ヲ得ルコトヲ目的トシテ金融界ノ攪乱、重要物資ノ生産又ハ配給ノ阻害其他ノ方法ニ依リ国民経済ノ運行ヲ著シク阻害スル虞アル行為ヲ為シタル者ハ無期又ハ一年以上ノ懲役ニ処ス
2 前項ノ罪ヲ犯シタル者ハ情状ニ因リ十万円以下ノ罰金ヲ併科スルコトヲ得
これらの罪は昭和16年法律第61号で追加されていたもので、戦時に備えた規定だったためか、戦後は跡形もなく章ごと削除されました。
第百三十一条 故ナク皇居、禁苑、離宮又ハ行在所ニ侵入シタル者ハ三月以上五年以下ノ懲役ニ処ス
2 神宮又ハ皇陵ニ侵入シタル者亦同シ
第百三十二条 本章ノ未遂罪ハ之ヲ罰ス
皇室関係の住居侵入等の罪も削除されました。
第百八十三条 有夫ノ婦姦通シタルトキハ二年以下ノ懲役ニ処ス其相姦シタル者亦同シ
2 前項ノ罪ハ本夫ノ告訴ヲ待テ之ヲ論ス但本夫姦通ヲ縦容シタルトキハ告訴ノ効ナシ
有名な姦通罪です。憲法14条1項に違反する疑いがあるので削除されました。
by l.aquarius
| 2006-11-21 23:42
| 法令